わらしべ長者とfacebook
“フェイスブックで上手にビジネスをするコツは、ビジネスをしないこと”っ
て、よくいわれます。そりゃフェイスブック上で自社の宣伝ばっかりしていたら、ソッポ向かれるのは当然ですよね。だって、「お呼びじゃない」から。人が楽
しく“友達”同士の会話を楽しんでいるとこで、「ところで、うちの商品の特徴はさ!」とか、「ね、うちの店に来てよ!」とかのべつまくなしに叫びまくられ
ていたら、うるさいし、ジャマ!「キョーミないしぃ…」です。ところが一方で、フェイスブックに登録した目的の4割がビジネスユースだというレポートもあ
るわけです。
http://www.advertimes.com/20110413/article11186
※アドヴァタイムス(宣伝会議)本年4月掲載
というわけで、「ビジネスはしたいし、しちゃ逆効果だといわれるし、じゃどうするの」というのが、今回のテーマ。前半は、おなじみのわらしべ長者のお話から“無償のギフト”が生むパワーの本質を探り、続けて後半は現代のわらしべ長者の実例から、共感が巻き起こす“エンロール(自発的巻き込まれ)”の重要性を確認、フェイスブック活用の最重要ポイントを探ります。
さて、今回は、かなり長くなりますので、お茶とお茶うけを用意してご覧ください。
物語の始まりは、「貧乏はいやだ!」だった。
一人の貧乏な青年が「ビンボーから脱却したい」と観音様に願ったところ、夢でお告げが。その内容は、「はじめに触ったものを、大事に持って旅に出なさい」。
ところが男は、観音堂から出た途端、けつまづいて、手にしたものが一本のわらしべ。で、男は夢のお告げを守って、わらしべを手にてくてくと旅に出る。
大きなアブが顔の周りを飛び回ってうるさいので、とっ捕まえて、わらしべに結びつけ、また歩き出した。すると道端で大泣きする男の子。わらしべのアブを見つけて、欲しがった。男は、わらしべのアブを男の子にあげた。よろこんだ母親が、お礼にとミカンを男にあげる。
しばらくいくと、娘さんが道端で苦しんでいて、水を欲しがっていたので、男は、もっていたミカンを娘にあげた。お返しに、娘は絹の布をあげた。
とつづき、以下、絹の布⇒死んだ馬⇒(途中略)⇒屋敷 となるわけです。
わらしべ長者は、物々交換の話じゃないのだ
この、わらしべ長者の話、物々交換で一本のわらが遂には屋敷になった話として受け取られていますが、実は、この話の中で物々交換は一度も行われていない。
男の行為は、常に無償のギフト、困った人に自分の持ち物を惜しげもなく提供している。で、物々交換に見えたものは、実はその返礼なんです。一本のわらしべが遂には屋敷になった秘密が実は、この「無償のギフトとその返礼」のなかに隠されているんですね。
これが物々交換であったら、交換される者同士の価値は原則として等価です。だって物々交換とはいえ、それは商取引なのですから。ところが、ここで行われているのは実は取引ではなく「贈与の交換」なんです。贈り物をいただいたら、もっといいものをお礼返ししたくなるというのは、どうも人間の本質のよう。
一本の赤いクリップから、交換を繰り返してついには家を手に入れた、カナダのカイル・マクドナルドさんの話。テレビでも紹介されているし、本も出ているので知っている方も多いはず。
カイルさんは、Bigger and Betterというゲームを思いついて、物々交換のサイトに一本の赤いクリップを出品し、交換を繰り返すことで1年後には一戸建てを手に入れたい、と宣言 しました。で、その結果、赤いクリップ⇒魚のデザインのペン⇒スマイリーマークが付いた陶器のドアノブときて、最後に、2階建ての家を手に入れた、という 実話です。
http://oneredpaperclip.blogspot.com/
http://oneredpaperclip.cocolog-nifty.com/blog/ (日本語サイト)
交流の中から、価値が生まれる
この一連の交換の中で、カイルさんがやった重要なことが2つあります。
ひとつは、交換のプロセスをちくいちブログで紹介していったこと。そしてもう一つは、交換するために、直接、相手を訪ねて行った、こと。
バンクーバーからマサチューセッツ、カリフォルニア、そしてニューヨーク、ロッキー山脈、トロントと、えんえん北米大陸を旅する中で、物々交換を通して丁寧に人に会い、その情景をブログで紹介していったんですね。そこに物々交換を通して価値が増大していった秘密があります。
さきほど、物々交換は商取引なので、原則として交換される者同士の価値は等価だ、とお話ししました。じゃあ、なぜ、一本の“ほとんど無価値”の赤いペーパークリップが、一戸建てに化けるなんて奇跡が起こったんでしょうか。
それは、カイルさんが提供したのはペーパークリップそのものの価値ではない、から。
カイルさんが提供したのは、「物々交換で、赤いペーパークリップからはじめて、一戸建てを手に入れられるか」というゲームなんです。で、そのゲームの重要
な要素が、交換に際しては、実際に自分が訪問するというルール。そのためにカイルさんは、広大なアメリカ大陸を自分の足で横断、縦断している。
では、そのルールによって何が生まれたのでしょうか。
それは、人と人との出会いというストーリー。で、その出会いの様子をブログで紹介していくことで、人々の共感を呼び、その共感(のレスポンス)がストーリーに厚みとリアリティを与えていった。それが、人々を巻き込む(エンロール)パワーとなったわけです。
つまり、赤いクリップから始まる物々交換で、カイルさんが提供していったのは、「モノ+出会いのストーリーへの参加(エンロール)」なんです。だから、交換するたびにエンロールの分だけ、交換価値が上がっていった。しかも、ストーリーの厚みが増すことで、価値自体も上がっていった。
では、フェイスブックでビジネスする秘訣とは
【ステップ 1 信用される】
まず大切なのが、自分がだれかを明らかにすること。伊達直人じゃだめなんです。
なぜか。
われわれがフェイスブックを利用するのは、顧客(あるいは潜在客⇒できうるなら見込み客)と継続的・安定的な関係を築きたいから。そのためには、相 手に信頼される必要があるし、そもそも信頼されるためには、まず信用される必要がある。だから、匿名だとアウト、となるんですね。ということで、フェイス ブックのプロフィールは丁寧につくりましょ(写真は必須)。
【ステップ 2 信頼される】
で信用されたら、次に信頼。信頼を得るためには、あなたがどんな人で、どんなことを考え、なにに価値を見出しているかを知ってもらう。
とはいっても、自分のことを知ってもらおうと、一方的に「俺ってさー」って話しかけても、たいていは相手にされません。「ウザっ」で、バッサリ。
ではどうすれば自分の話を聞いてもらえるかというと、答えは簡単、「相手の話を聞く」。相手の話を聞くことで、コミュニケーションが生まれ、コミュニケーションの中で、自分のことに興味を持ってもらい、そこで初めて、自分の話を聞いてもらえる下地ができる。日常の人間関係とおんなじですね。
【ステップ 3 無償のギフト】
丁寧なコミュニケーションを通して自分に興味を持ってもらい、興味を持ってもらうことで、仕事の話を聞いてもらう下地ができる。
しかし仕事の話といっても、やはり宣伝はアウト。
宣伝ではなく無償のギフト、価値あるギフトとして“専門的なアドヴァイス”、を誠意を持って提供する。
わらしべ長者がタダのものから価値を生み出した源泉は、“誠意と奉仕”。それが無償のギフトになって現れ、相手に信頼・感謝され返礼となって帰ってきた。
価値のあるものを見返りを求めず(溜息)提供する、じつはそれこそが、フェイスブックをはじめとするネットメディアでビジネスする最初の一歩。ここを勘違いすると、冒頭に申し上げたような“相手の耳元で宣伝文句を喚き散らす”ということになってしまう。
【ステップ 4 エンロールを生む】
信用され、信頼され、興味を持ってもらい、知ってもらう。そしてギフトを通して評価され、でも、それだけではお客様にはなってもらえない。
お客様になってもらう、しかもファン客になってもらうためには、自発的に巻き込(エンロール)まれてもらわなければならない。そのための最も基本的な手段が“いいね”であり、自社ホームページのシェア。
ところが、ただ“いいね”してもらってもあんま意味がない。
じゃあどんな“いいね”やシェアがいいかというと、それはコメント付。自分がその記事やホームページにどんな興味を持ったか、という“かかわり”が重要なんです。
なぜかというと、コメント付のいいね、シェアっていうのは、やっぱ「紹介する以上は」っていう責任感が生じるんですね。その気持ちが、さらに積極的なかかわりを生む。しかーし、その気持ちは、ほっとくとわりにすぐに薄れてしまう。
【ステップ 5 着地させる】
じゃあ、薄れさせないためにはどうするか、っていうと、店舗に実際に足を運んでもらうとか、キャンペーンに参加してもらうとか、具体的な“行動”に定着させていく工夫が必要。そのために特に重要なのが、インターネット上でのランディングページの設定。
長くなりすぎたので、端折りますが、フェイスブック上でエンロールしたら、具体的な行動を誘発するために、相手に何をしてほしいかを伝える必要がある。でも、それをフェイスブック上でするには無理がある。なので、自社サイトに誘導して、なにをするべきか、どういうふうにするか、の具体的な手順を教えてあげる。
この長いプロセスを経て、フェイスブックを活用したビジネスっていうのは効果が生まれるんですね(ふぅ)。
お互い、頑張りましょ。そして、長い文章にお付き合いいただいて、ありがとうございました。
「売れる理由」 売上アップの基本のキ
御社の商品の何がお客様に愛され喜ばれているのかを、きちんと理解し、お客様にわかり易いシンプルな言葉で伝えること、それが売れる理由です。
お客様に売れる理由をしっかり伝えることで、行き当たりばったりではない、お客様と継続的・安定的な関係を作り、売上を上げ続けることができます。
で、その売れる理由を見つけるにはどうすればいいのか、というのが前々回のテーマ。続いて今回のテーマは、売れる理由を見つけたとき、私たちがすべきことは何か、ということです。
今回はちょっと長いので、我慢してお付き合い下さいね。
売れる理由は、お客様に聞け!
それでは、前々回のまとめから。
ちょっとタカビーではありますが、多くの企業が、なぜ自分たちの商品が売れるのか、「売れる理由はいったいなんなのか」をキチンと理解しないまま、「だって売れてるんだもん」という、ある種、いきあたりばったりで販促活動を行っています。
そして実に残念なことですが、効果もわからないまま、決して安からぬ金額をメディア広告や折り込みチラシ、ホームページ制作につぎ込んでいます。
ここでポイント! 売れる理由を知るための一番いい方法は、お客様に聞くことです。
で、何を聞くか、というと
- お客様は、本当は何を望んでいるか。 ※御社の商品を使用することで、どんな幸せを得たいと思っているか。
- お客様は、なぜあなたを選んだのか。
- お客様は、どうやってあなたのことを知ったか。
- 何で、あなたに問い合わせようと思ったか。 ※具体的に問い合わせ行動を起こさせた原因・きっかけ。
- お客様は、あなたの商品にどのぐらい満足してるか、どこに満足したのか。
の5つ。
と、ここまでが前々回のおさらい。
さて、ここからが今回のテーマ。
売れる理由を見つけたとき、私たちがすべきこと。御社の売れる理由をお客様から聞いて、確信を持ったらやるべきこと。
それは、お客様に御社、そして御社の商品を選んでいただくために、売れる理由を販売活動のすべての場面で明確に主張する。お客様に、わかり易い、短い言葉で的確に伝えること、です。
売れる理由は、全社体制で伝えよ!
私たちは、私たちの売れる理由を、メディア広告や折り込みチラシ、ホームページで、わかり易く、目立つように掲載しなければいけないし、もっと大事 なことは、御社の全スタッフが、売れる理由を明確に理解し、問い合わせに対し、ひとことで、わかり易く伝えることができなければならない、ということなん ですね。
ここでたまたま、どんぴしゃな事例があったのでご紹介します。
ごく最近、私自身に起こった“事件”です。フェイスブックで経緯をご紹介したのでご存知の方もいらっしゃると思いますが…。
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先日、契約していたADSLのスピードが極端に落ちたんですね。
それで、サービスにメールしてチューニングしてもらったけど、なかなからちが明かないので、解約してWiMAXに契約替えすることにしました(現在は、とても快適。対応も丁寧で親切でした)。
そこで、誰もがやるようにWiMAXについてネットで調べて商品比較をしたら、ちょうど、既存契約社で値引きキャンペーンをやっていた。で、内容を見ると他社と比べても十分競争力のある価格のようだ…。
ここで、残念ながら即申込みとはいかない。
というのも、みなさんご経験があると思いますが、プロバイダー料金って普通の人には、とっても分かりにくくできている。
費用のページを見て、「ふーん月、〇〇円なんだ」と思っても、よく調べると別のページに基本料金が書かれていたり、実は、適用除外が細かく書かれていて、意外なところで落とし穴があったり、と、とてもじゃないけど、怖くてネットから即申込みなんてできないわけです。
これも最重要ポイントのひとつなんですが、紙幅の関係で改めてご説明したいと思います。
で、念のためインフォメーションデスクにメールで問い合わせたところ、案の定、WiMAXの料金とは別個に、少額だけど基本料金がかかると書いてあ る。しかも、ここが大事なところなんですが、「キャンペーンのキャの字も書いていない」。目を疑った、というのは嘘で、大体想像通りではありました。
普通だったら、この時点でアウトですよね。「よそで契約しよ。もっと安いところがあるかも知れないし」、が普通の反応。だってWiMAXはタブレットPCの普及を睨んで、大手が一斉に力を入れているいわば激戦区なわけ。で、どこもサービスにとりたてて違いがない。どこを選んでも大した違いがない、あっというまのコモディティ商品なわけです。
私としては、メルアドを変えたくなかったこともあり、また、予想どおりの反応だっこともあって、キャンペーン適用できないかどうか、インフォメーションデスクに再度、メールで問い合わせました。
以下が、その問い合わせメールです。
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丁寧に教えていただいてありがとうございます。
ところで、リンクページを拝見したところ、キャンペーン期間中とあったんですが、私のケースでは、適用されるのでしょうか。
以上、よろしくお願いします。
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ね、そんなに怒っていないでしょ。で、これに対する回答が次のメール(いろいろ差し障りがあるといけないので、多少アレンジ)。
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再度ご連絡をいただきまして、ありがとうございます。
〇〇インフォメーションデスク 〇〇です。
「〇〇 WiMAX」のキャンペーン、および月額基本料金について、ご案内いたします。
お客さまのご登録状況をお調べいたしましたところ、過去に「〇〇 WiMAX」キャンペーンの適用はございませんので、現在実施いたしておりますキャンペーンをご利用いただけます。
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では、今回のまとめです
さて、長らくお待たせいたしました。いよいよこのケースのまとめに入りましょう。
このキャンペーンは、「激戦区で勝ち抜く」ための誘客キャンペーンなんだと思います。ここで顧客をどれだけ囲い込めるか、ということが、サービスを
継続し成長させるための鍵なはず。そのために、優秀なスタッフがサービスの詳細と競争力のある価格設定、機器ベンダーとの納入調整、キャンペーンを打つタ
イミングなんかを、知恵を絞り切って考えたはずなんですよね。
で、そのキャンペーンを成功させるために、販促物を作って、何百万かかけてキャンペーンサイトを構築して、価格コムやなんかと調整して、さあ、発売。単純に考えても、これだけの人手と手間とコストがかかっている。
ところがぎっちょん。肝心の出口の部分で、大きな穴が開いていることに気づかなかった。
見込み客に最後の一押しをする、窓口の教育がきちんとできていなかった。
せっかく、サイトを見て買う気満々のお客様を、最後の最後で取り逃がすリスクを冒してしまった、っていうか、実際にかなりの顧客が逃げたと思いますよ。
だって、書いていること(サイト)といっていること(インフォメーションデスク)が違うんだもん。
重要なポイントなのでシツコク繰り返しますが、ふつう、自分が期待した答えが返ってこなかったら、改めて問い合わせたりしません。そのままサヨウナラ。たくさんの人手と多額のコストが、一瞬でパー。
してみせて、言ってきかせて、させてみる
これって決して他人ごとではありません。実によくあるケース。B2Cの会社ならいざ知らず、B2Bの会社ならごく普通に見られるケースです。
たとえば、お客様から電話で商品の問い合わせがあった。営業マンが外勤で出払っていて、総務の社員しかいない。お客様の電話番号を聞いて、「営業から電話させます。」ってよくあるでしょ。 B2Cでこれやったら即アウトですけど、なぜかB2Bでは許されている。
はっきりいいますが、許しているのは自分だけ。お客様は決して許していません。取引先を変えるのが面倒くさいから我慢しているだけで、切るときめたらあっという間です。
どれだけのお客様が実際に逃げ出したか、あるいは切ろうと思ったかをカウントできたら、経営者は真っ青になるはず。
対策は、決して難しくはありません。実にシンプル。ただちょっと面倒くさいだけ。
- 「売れる理由」をワンフレーズ化する。
- 窓口で対応する部分と営業マンに引き継ぐ部分をキチンと仕分けする。
- 「売れる理由」をキーに販売ツールを揃える。
- 対応方法(トーク)をマニュアルにまとめる。
- ツールの使い方を全社員に定期的に教育する。
- ロールプレイングで浸透させる。
もし、忙しくて自社でやっつける時間がとれないんだったら、コンサルタントに頼むって手もあります(ちょっとだけ宣伝 (=^▽^=))。
今回のケースでも、多分、マニュアルはきちんと整備して、ミーティングやなんかで確認したはず。ただ、ロールプレイングまではやったかどうか…。
上杉鷹山じゃないけど、「してみせて、言ってきかせて、させてみ」ることがなによりも大切なんですね。
ということで今回のテーマは、「売れる理由を見つけたとき、私たちがすべきこと」でした。
今回、書けなかったことは、改めて「ネット申し込み獲得の決め手は、価格のわかり易さ」ということで次々回ぐらいにお送りしたいと思います。
次回のテーマは、「わらしべ長者とFaceBook」でお送りします。
長い文章にお付き合いいただいて、ありがとうございました。 これに懲りずに、次回をお楽しみにお待ちください。
それでも御社は、白馬の騎士を待ち続けますか?
白雪姫のお話。嫉妬深い魔女がくれた毒りんごを食べて死んでしまった白雪姫。悲しみに沈む七人の小人。そこへ現れた白馬の騎士。白雪姫の美しさ清らかさに、騎士は思わず口づけを…、って「遅いんじゃつーの」。
無事生き返ったからいいようなものの、ふつーありえないですよ、たかがキスで死人が生き返るなんて。しかも見ず知らずの死人にキスするなんて、どーゆー趣味をしとるの。
思わず無茶な突っ込みをしてしまいました。
一方、シンデレラ。美しい少女は、ボロボロの服を着せられて、一日中、嫉妬深い姉たちにこき使われている。そこへ魔女が現れて素敵なドレスで変身。舞踏会で王子様の目に留まり、目出度しめでたし。
でも、そこがもし舞踏会じゃなく村の通りだったら、王子様はボロをまとったシンデレラに目を留めたでしょうか。はたして王子様は、ボロをまとったシンデレラの内面から輝く美しさに気づくだけの眼力、人間力を持っていてくれるでしょうか。
「いいものを作れば必ず売れる」。それはそうだと思います。いいものの価値に気づいて評価してくれて、そして買ってくれるお客様は確実にいると思います。
商品の価値に気づき、自分が気づいたということに誇りを抱いて、そしてその価値を広めてくれる。ファン客中のファン客、エバンジェリストの強固な支持を受けることができた企業は強いですよ。
ただ問題はそれまで会社がもつか、ということなんですよね。もうちょっと丁寧に説明すると、御社の商品の魅力、価値に気づいて口コミで積極的に広げ てくれるお客様が〝自然に育つ〟のに、いったいどのぐらいの年月が掛かるんだろうか…。これまで一体どれだけの企業が、白馬の騎士を待ったまま、息絶えて しまっただろうか。
前回お話した内容の繰り返しになって恐縮ですが、でもそれだけ重要なテーマですので、我慢して聞いてください。
販売戦略を立てる際の管理項目として、商品」、「価格」、「市場」、「流通」、「競合他社」、「顧客」、「自社」があり、その中で最も重要な項目が 「顧客」です。当然のことながら、企業の収益の源泉はお客様であり、どんないい商品を作ってもお客様が支持してくれて、買ってくれなければ、企業は立ち行 かない。商品が売れ続け企業の生存を支えるためには、その商品を支持してくれるお客様が必要なんですね。
その時、私たちがしなければならないのは、商品を支持してくれる(可能性の高い)お客様の目の前に、「ほら、こんなに価値の高い商品がありますよ」、「この商品は、あなたをこんな風に幸せにしてくれますよ」って気づかせること。
ただ、ここに大きな落とし穴があります。それは、「うちの商品を支持してくれるお客様って、だれさ!」、「うちの商品で幸せになってくれるお客様っ て、どんな人?」ということ。その答えを見つける切り口が、実は「御社に最も貢献してくれている、特定のお客様を思い浮かべる」ということなんです。
そして、お得意様の具体的な姿を思い浮かべたら、次は、そのお得意様と、どんな風に出会ったかを思い出してください。
- 飛び込みでいらしたんですか。
- チラシで見つけてくれたんですか。
- それとも新聞広告ですか。
- お友達の紹介ですか。
そのお友達は、どんな風に紹介してくれたんですか。
どうですか。思い出せましたか。多分、多くの方が「あれっ?」と思ったのではないですか。ね、愕然とするでしょ。私たちを支えてくれているお客様のことを、いかに知らないで過ごしてきたか。
中でも特に重要なこと。御社のお客様で、別のお客様を積極的に紹介してくださった方は、どれだけいらっしゃいましたか。その方は、いったいどんな方 でしたか。その方は、別のお客様にどういって御社を薦めてくださったんですか。そのお客様は商品のどんな魅力に惹かれて、薦めてくれたんですか。その魅力 は、御社が想定していたものと一致していましたか。
御社は、お客様を紹介していただけるよう、どうやってお願いしましたか。白馬の騎士に救援に駆けつけるよう、積極的な呼びかけをしていますか。どう やって救援すればいいか、きちんと伝えていますか。つまり、紹介すべきポイント、御社の魅力とその伝え方について教えていますか。紹介に役立つツールをお 渡ししていますか。
白馬の騎士は、止まるも行き過ぎるも自由です。「なんか面倒」のひとことで、通り過ぎてしまうことだってあります。だからきちんと、ファーストエイ ド・キットと救援の手引きを用意しておきましょう。白馬の騎士は、実は不精なんです(武将だけに…、すみません。つい我慢できなくて…)。
販売促進の最重要ポイントは、ずばり、「お客様を知ること」。
当たり前といえば、至極、当たり前のこと。でも、その当たり前のことがなかなかできないから、みんな苦労するんですよね。
一番いい例は、ダイエット。毎日体重計に乗る。週に何回か必ずジョギングかウォーキングをする。その日の体重と、走った距離をメモする…。
「えー! カシマサヌ」。武田鉄矢だったら、「しぇっからしかっ」というところ。それができるぐらいだったら、最初から太っちゃいません。
管理項目が摂取カロリーと消費カロリーのたった二つという、体重管理でこうですから、ましてや管理項目が無数にある販促活動やいかに、です。
「商品」、「価格」、「市場」、「流通」、「競合他社」、「顧客」、そして忘れてならない「自社」。
販促活動の管理項目は、ざっと挙げるだけで、これだけあります。 問題は、どれから始めるかです。
「全部同時に、全体を俯瞰しながら」というのが理想ですが、専門のマーケティング部門があったり、マーケティング会社に気軽に依頼できる大きな会社ならいざしらず、われわれ中小企業にはそんな余裕はありません、よね、ふつう。
販売戦略を立てる際には、最も重要な管理項目からはじめるべきです。
それが顧客、「お客様」。
御社は、お客様のことをどれだけ知っていますか。そして、御社のスタッフ全員が、お客様のことを十分、理解していますか。
お客様こそが御社の収益の源泉であり、御社が継続発展していくための、最も重要な存在。そのお客様のことを、どれだけ知っていますか。
性別、年齢、職業、家族構成、趣味、嗜好、御社が提供する商品・サービスにかけられる年間予算…。
こういったデモグラフィック分析とならんで、いや、より重要なのがお客様と御社のかかわり。お客様が御社のどこを評価して、選んでくれているのかを、具体的に知ることです。
- お客様は、本当は何を望んでいますか ※御社の商品を使用することで、どんな幸せを得たいと思っていますか。
- お客様は、なぜあなたを選んだのですか
- お客様は、どうやってあなたのことを知りましたか
- 何で、あなたに問い合わせようと思ったのですか ※具体的に問い合わせ行動を起こさせた原因・きっかけ。
- お客様は、あなたの商品にどのぐらい満足していますか、どこに満足したのですか
この5つ質問に、社長だけでなく、御社スタッフの全員が答えきれていますか。「そんなこといっても、いろんなお客様がいらっしゃるから、ひとことでは…」。
そうですね。では、ヒント。具体的なイメージ方法としては、次の二つの方法があります。
- ABC分析により、売り上げ上位者を選んで類型化する。 ※上位3~4割の顧客により、売り上げの6~7割が達成できている。
- 御社に最も貢献してくれている、特定のお客様を思い浮かべる。
さあ、イメージできましたか。できましたね(ちょっと強引)。イメージできたら、さっきの5つの質問の答えを出していきましょう。
一番いい方法が、直接、聞くこと。もちろん、対象人数によりアンケートにするか、それとも直接、聞くか、合理的な方法を選ぶ必要があります。でも、可能だったら、アンケートよりも、直接、お客様にヒアリングする方をお勧めします。相手の話を聞くことぐらい、人間関係作りに役に立つことはないですから。
もちろん、最初からジャストミートな顧客像が出来上がる、というわけにはいきません。継続的、計画的に顧客の情報を入手してイメージの修正を行うと共に、できるだけ具体的な肉付けをしていきましょう。
そして次のステップ。イメージしたお客様に、どういう風にメッセージを送り、コミュニケーションをとっていけば喜んでいただけるか、御社のことをより強く信頼してくれるようになるか、コミュニケーション戦略を構築していきます。
コミュニケーション戦略=販促戦略なんですね。一方通行じゃないお互いに高めあい、信頼し合える関係作り。
お客様とのあいだに築きあげたいと思いませんか。
さて、ちょっと長くなりすぎたようです。この続きは、次回、お楽しみにお待ちください。
売上を上げる ファン客の育て方
よく、売上が低迷すると、社長の「新規開拓だ~」の鶴の一声で、プロジェクトチームをたちあげたりしますが、あまり成功したという話は寡聞にして聞かない。
売上が低迷してコストを圧縮しようという時期に、高コストの取組をしようというのもどうかと思いますが、何が何でもなんとかしなくては、ということなんでしょうね。
一般に、新規客を獲得し購入していただくためのコストは、既存客に購入していただくコストの5倍以上だといわれています。経験からいって、5倍で収まれば上出来ではないでしょうか。新規客の獲得コストは、想像以上に高いのです。
といっても、別に新規開拓をしちゃダメ、といっているわけでは勿論ありません。
業種にもよりますが、最近では顧客流出率が四割を超える業種も珍しくない。逃げて行ったお客様を補うには新規開拓はどうしても必要です。
でも、優先順位が違う。流出顧客の穴を埋めるより先に、お客様を逃がさない工夫が何よりも大切。顧客流出率が高いということは、お客様が御社の商品やサービスに納得していないという証拠。その穴をふさがないことには、いくら新規客を集めても、集めた先から逃げられてしまい、売上維持でも下手したらコスト高で赤字になってしまいます。
お客様が逃げ出す理由はいったいなんでしょう。
- 粗悪品を売りつけた。
- 馬鹿高い商品を無理やり売りつけた。
- 対応が悪くてお客様を怒らせた。
まあこういう極端なケースもあるとは思います。
- 競合商品と比べて、特徴がない。
- サービスが通り一遍で、お客様が選び続ける理由がない。
こちらは、実にありがちなケースで、早急な対応が必要です。
※ブログ「2.6 商品の魅力はお客様に聞け」をお読みください。が、普通はもっと単純で、単に、お客様のアフターフォローをしていない、というケースが実はほとんどなんだと思います。
御社では、購入いただいたお客様に、定期的に手紙や電話、メールなどで接触していますか。特に、購入直後はとても大切な時期。商品はどこでも、誰からでも購入できます。でも、“あなたから”買った、ということが何より大切です。
モノ余り今、私たちは商品そのものにあまり大きな意味を見出していません。だっていつでも買えるし、どこででも買えるのですから。私たちは、商品を通して、人と人とのふれあいを求めているのです。ではどうすればいいのでしょうか。
そこで、カリスママーケッターの神田昌典さんが勧めるのが「21日間感動プログラム」。
※詳しくは、 http://www.kandamasanori.com/ →「成功ノウハウ集」→「21日間感動プログラムで流出客を減らす」でPDFをダウンロードできます。
ざっと内容を解説すると、
- 最初に購入後3日以内にお礼のハガキ、手紙を出す。
- 1週間後にフォローのハガキ、手紙を出す。 使用感はどうだったかを聞く ※不満はないかといったネガティブな聞き方はしない ※商品の特徴(優れた点)を念押しし、購入の決断がいかに正しかったかを確認する
- 3週間後に、思いがけないちょっとしたプレゼントを贈る(商品サンプルなど)
たとえば、服を買った直後、よその店の品ぞろえが無闇に気になったりはしませんか。買う前はそうでもなかったのに、買った後の方が気になる。
たとえば、パソコンやテレビを買った後で、ネットでその商品の評判とかランキングを調べたことはありませんか。
この不安な時期にお客様を放りっぱなしにするのではなくて、不安な気持ちをキチンと包んであげましょう。それがファン客を育てる第一歩になります。
では、ファン客を育てると、どんないいことがあるのでしょうか。
- 新規客に比べて顧客獲得コストが低いので、販管費の負担が小さい。
- リピート購入していただける(生涯顧客価値)。
- 口コミでお客様を紹介していただける(お客様が営業マン)
既存客の流出を防止することは、実は、お客様を大切にするということなんですね。
よく、新規客の獲得のためにディスカウントセールをすることがあります-入会キャンペーンとか-、でもこれって、何か変だとは思いませんか。御社を支えてくれているのは、まだ見ぬ新規客ではなくて、既存のお客様のはずです。
既存のお客様に差し上げるサービス以上のことを新規のお客様に提供するというのは、つまり、釣った魚に餌はやらないということ。今どき、そんなんじゃあ女房だって逃げていきます。
お客様を定期的にきちんとフォローすることで、ファン客になってもらえる。そうすれば、売上がキチンと読めるようになる。さらに、コストをかけずに新規開拓をすることができる。こんないいセールスは、ちょっとないと思いませんか。
ところで、お客様をフォローするために、どうしても必要なことがひとつだけあります。
それは何かというと、お名前とご連絡先をいただくこと。連絡できないんじゃ、フォローのしようもありませんから、ぜひ、お気を付けください。